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あ す な ろ ト ー ク 集
48.繰返しで精神は鍛えられる
 団塊世代にとって、もっとも印象に残っている現代用語は「巨人、大鵬、卵焼き」と小欄で紹介したことがある。
 第48代横綱大鵬の納谷幸喜さんが亡くなった。大相撲史上最多の32回優勝をはじめ、6連覇2回、全勝優勝8回、45連勝など輝かしい戦績を残した。しかし昭和の大横綱も「天才」と呼ばれることを嫌った。「私くらい努力した人間はいない」と言ってはばからない。
 5歳の時、樺太から引き揚げ、北海道内のへき地を転々とした。終戦直後の貧しい時代だ。小学生のころから、根っこ掘り、まき割り、水くみ、土木作業などあらゆる仕事をこなした。入門時には70キロしかなく、「電信柱みたいにガリガリにやせていた」と振り返る。それでも「努力」で頂点を極めた。
 世間ではとかく、「どちらが強いか」と比べられた。大分県が生んだ「昭和の角聖」横綱双葉山とである。「私にとって雲の上の存在であり、比べるべくもない」と謙虚だ。「柏鵬時代」を築いたライバルにも「柏戸あっての大鵬」と心配りを見せた。苦労人だけに人の痛みの分かる横綱だったに違いない
 高度経済成長期のヒーローはこんな遺言も残している。「つらくとも、同じことを繰り返すことによって、精神は鍛えられる」
平成25年1月22日 大分合同新聞 東西南北
【コメント】
どん底を味わい、凌いでこられた苦労人ならではの言動一致の言でしょう。