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あ す な ろ ト ー ク 集
46.後ろには夢がない
 振り返れば今年は、首都圏に根を張る県出身者の才能が花開いた年だった。津久見出身の劇作家、中津留章仁さん(川崎市)が栄えある第46回紀伊国屋演劇賞を手にしたのは1月。東日本大震災や原発事故をテーマにした作品はあまたの賞を総なめにし、その名を全国にとどろかせた。
 震災関連では2人の大分県人が気骨を見せた。竹田市出身のテレビディレクター真部猪一さん(東京)は被災地のルポ番組で国際コンクール金賞を射止め、別府市出身の写真家石川梵さん(同)は日本写真協会賞・作家賞を受賞。いずれも新緑まばゆい時季の慶事だった。
 女性もひらりと輝いた。国内の島々の情報をインターネットや紙媒体で発信する「離島経済新聞社」(東京)。編集長を務める日田市出身の鯨本(いさもと)あつこさんは6月にロハスデザイン大賞に選ばれ、その発想とデザイン性は今年のグッドデザイン賞にもノミネートされた。いやはや、誉れ高い。
 ともあれ、気付けば今年も今日を残すのみとなった。「振り向くな。振り向くな。後ろには夢がない」と言ったのは寺山修司だが、くたびれた手帳をめくりながら、ゆっくり、ぼんやり、しみじみと行く年に思いをはせたい大晦日である。
平成24年12月31日 大分合同新聞 東西南北
【コメント】
済んだことを反省することはあっても、嘆いたり悔やんでばかりでは先は明るくないだろう。そこでどう動くかであり、自分で切り開いていくしかない。