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あ す な ろ ト ー ク 集
31.キレる
 「ふだんは優しいがすぐキレる」。大学生らによる岡山での集団暴行致死事件で容疑者の一人はそう評価されていたという。我を失い怒りをあらわにする「キレる」という嫌な日本語がすっかり定着してしまった。程度の差はあれ、現実に「キレ者」が多い証左だろう。
 米国在住の作家、冷泉彰彦氏は近著『「関係の空気」「場の空気」』で「日本語の窒息」説をとなえる。穏便な言い回しで意思を伝えたり、利害の対立する場でうまく問題を解決するための日本語が失われているのでは、と。
 「キレる」といえば条件反射で「若者」と続けたくなるが実態は違う。いい年をした大人の間でも時に言葉の暴力が横行し、感情が行き違う。人間関係の窒息やキレた物言いを防ぎ、上下関係のコミュニケーションを保つため、年齢や地位にかかわらず「です、ます」調で話してはどうかと冷泉氏は提唱する。
 下が上に「タメ口」を利くのは論外だが、職場の長だけがくだけた口調で冗談を披露するのも力を背景にした笑いの強調であり、周囲を窒息させる指導者は長い目で見ると職場のパフォーマンスを低下させる。自分を「切れ者」だと思う人ほど要注意だ。   
平成18年7月3日 NIKKEI NET;春秋
【コメント】
キレるってほんとうに嫌な言葉だ。確かに子供だけでなく大人がキレている。なぜキレるのか。日本語の問題でなく、心の余裕・我慢の気持ちを失っている。さらに言えば周囲への気配りや心遣いが失われつつあることとも関係しているようだ。