あ す な ろ ト ー ク 集 |
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23.一言の仁義 |
列車の中で隣の若い女性に「携帯かけていいでしょうか」と声をかけられた。「どうぞ」と 言うと、小声で相手に要領よく列車の到着時刻を告げ、すぐに切った。「有難うございました 」と礼も述べる折り目正しさに少なからず驚かされた。 電話の声は相手が見えないだけに、よくよく注意がいる。相手が大声だと、ついつられて自 分の声も大きくなりがちでもあるから。それに大勢の人が居合わせる乗り物の中であれば、携 帯電話の迷惑度はかなり高くなる。「電源をお切りください」のアナウンスはあまり役に立っ ていない。そんな中で冒頭の女性の周りへの配慮は携帯電話を持たない主義の私をコロリと変 えてしまう力があった。 急用や密に連絡を取りたい時のためのケイタイであろうから、やたら「うるさい」といきり 立つわけではない。が、動けない場所で遠慮のない声を聞かされる時の辛抱がつらい。それだ けに、先の女性のような「一言の仁義」をさらりと切ってもらえば、案外「OKよ」となる人 は多いのでないだろうか。 |
平成15年9月18日 朝日新聞;読者投書;坂井紀子 |
【コメント】 周囲にかまわず大声で喋りまくる傍若無人ぶりは目に余る。特に列車内での果てしない大声での会話は携帯 電話どころではない。何がこんな状況にさせたのだろうか。社会生活のファンダメンタルが欠けている。 道徳を説く声もあながち否定はし難い気になってくるが、この方のすばらしい言動の源泉は何なんだろう。 |