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あ す な ろ ト ー ク 集
11.咸宜園における三奪法
 日田市にある咸宜園を訪ねた。咸宜園における教育のすばらしさはいわゆる「三奪法」とい
うものにある。三奪とは、入塾を希望する者から学力・年齢・地位の3つを取り去り、すべて
一様に平等に扱うこと。封建時代にあっては画期的な考えである。
 園長の広瀬淡窓は商家の出身だけに、学問が決して机上のものであってはならないこと、経
済に裏うちされない政治は弱体だということを教えている。一番印象的だったのは、淡窓の作
った一首のいろは歌だった。「鋭きも鈍きも共に捨てがたし 錐と槌とに使い分けなば」言う
までもなく、人の個性の活かし方を示唆した歌である。鈍きを切り捨ててはいけない。槌とし
て立派に光を放つのだから・・・・・・という思想を、いじめや登校拒否、カリキュラム一辺倒の今
の教育者はなんと聞くだろうか。
 淡窓のこんな考え方は、二百年たった今もちっとも古びていない。それどころか今になって
も実現できていないものさえある。
平成3年2月 JR広報誌;Please
【コメント】
 今流にいえば適材適所ということだろうだが、切り捨ててしまわないところにもっと進歩的な思想がある
といえる。これまでにも何度か人事にかかかわってきたが、評価の多くのはその人の能力を見ているという
より、自分に合うとか言うことを聞くかどうかのようだ。これだと須らく人を育てることはできない。