索引へ戻る

あ す な ろ ト ー ク 集
7.親の権威
 「子は親の鏡」という言葉があります。反対に「親は子の鏡」ともいえます。とにかく、子
供は親を見習って育つのです。ですから、ほんとうの意味でのいい子を育てるには、親がほん
とうの意味でいい親でなければなりません。いい親というのは、慈悲と知慧を兼ね備えた親を
いうのです。
 今の父母には、そうした真実をつらぬく厳しさというか、権威というものが欠けているので
はないでしょうか。厳しい教育をするには、親がそれだけの権威を持っていなければなりませ
ん。権威というのは、人をリードするにふさわしい人間的価値を持ち、それを日常の生活に
「鏡」として見せ得る人格の力をいうのです。そして、同じ叱るにしても自分の都合で叱った
り、感情にまかせて叱ったりしません。そうした親ならば、どんなに厳しくとも子供は反感を
持ったり、うらんだりはしないものです。ただ恐れ入るものです。
 作家の幸田文さんは父上の露伴翁から家事万端についてやかましくしつけられたそうです。
文さんが拭き掃除をしていると、なっておらんといきなり突き飛ばされ、その転げ方が「女の
嗜みにそぐわない」と、また叱られたそうです。もっと優雅に転べというわけです。露伴翁は
文さんの雑布を取り上げると、見とれるほど完璧な拭き掃除ぶりをみせたそうです。ちょっと
乱暴な父親でも、恨むどころか、むしろ感謝をしているそうです。
昭和58年6月8日 抜萃のつづり;立正佼成会会長 庭野 日敬
【コメント】
しごく当然というか、もっともなんだけれども、聖人君主の言だな。他人(ひと)には厳しく言えても己が
それだけ完璧にきちんと出来るかとなると難しい。No25の「笑いながら叱る」にもあるが、怒るので
なく「叱る」ことはきちんとすべきだな。自分も含めて昨今これが弱い・出来ていない。